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【要約:作業療法士視点】イシューからはじめよ

仕事術

こんにちは、たにしんです。

今回は、ビジネス書の名著である「イシューからはじめよ」の内容を作業療法士視点で、医療現場でも使えるように解説していきます。

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この「イシューからはじめよ」は名著として、様々なところで紹介されていますね。

この本の著者は、安宅 和人(あたか かずと)さんです。

安宅和人 - Wikipedia

東京大学大学院生物化学専攻にて修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。4年半の勤務後、イェール大学・脳神経科学プログラムに入学、という経歴を持っておられます。

脳神経科学とビジネスの最前線を行ったり来たりされ、どちらの領域でも圧倒的な活躍をされているという異色の経歴を持った方ですね。

そんな安宅さんの書いた本、仕事の進め方においてとても参考になりました。

この記事を読んでほしいのはこんな方。

□ 仕事には慣れてきたけど、プロジェクトを立ち上げたことがない方。
□ 自分の関わるプロジェクトで結果を出したいと思っている方。
□ 仕事で成果を出して、成長したい方。


「イシューからはじめよ」の3つの要点

この本の要点は以下の3つです。

  1. バリューのある仕事とはなにか?
  2. イシューの定義
  3. イシューの見極め方

それぞれ、解説していきます。

① バリューのある仕事とはなにか?


仕事で結果を出すには、このバリューのある仕事というものを理解しておく必要があります。



バリューのある仕事とは、イシュー度が高く、かつ解の質が高い仕事のことを言います。



解の質とは、問題に対して出した答えの質です。



例えば、患者さんの筋力を上げるにはどうすればよいか?といった問題提起をしたとします。



それに対して、私たちは答えを出しますよね?

  • 訓練での筋力トレーニングの頻度を増やす
  • 訓練での筋力トレーニングの負荷を増やす
  • 訓練以外での自主トレーニングの指導をする
  • タンパク質の摂取を増やすよう促す

など。



これらの出した答えが、提起した問題をいかによく解決できるか。



それが解の質です。



提起する問題にもよりますが、多くの場合、最小限の労力や時間・コストで大きな成果を生むことができる答えが、質の高い解ということになります。



では、あまり聞き慣れないイシュー度とは何でしょうか?



イシュー度とは、自分の置かれた局面で、ある問題に答えを出す必要性の高さのことです。



つまり、自分が仕事をしている場で、本当に答えを出す必要のある問題はイシュー度が高いということになります。



例えば、作業療法士として、新しい訓練方法を実施することで、患者さんが従来の訓練方法よりも圧倒的に良くなる可能性がある場合、その問題は答えを出す必要性が高く、イシュー度の高い問題といえます。



一方で、作業療法室の隅にいつもゴミが溜まっている、という問題があったとしたら、それは答えを出す必要性は前述の問題と比べると高くないと思います。



作業療法室の隅にゴミが溜まっている問題は、イシュー度の低い問題ということになります。



これは極端な例ですが、ここで言いたいのは、世の中には解く必要性の高い問題がある一方で、あまり解く必要性のない問題もあるということです。



そして、最初に書きましたが、バリューのある仕事とは、イシュー度が高く、かつ解の質が高い仕事です。



つまり、自分の置かれた局面で解く必要性が高い問題に、優れた答えを出すことが、バリューのある仕事ということです。

引用:イシューからはじめよ.安宅 和人

② イシューの定義


前章で、バリューのある仕事について解説しました。



そして、イシュー度という言葉が出てきましたが、ここではイシューについて深掘りをしていこうと思います。



そもそも、この本のタイトルは「イシューからはじめよ」。



イシューについて理解していないと、この本の内容は理解できたとは言えません。



イシューの定義とは、以下のようになります。

イシューの定義

  • 2つ以上の集団の間で決着のついていない問題
  • 根本に関わる、もしくは白黒がはっきりしていない問題

この2つを満たす問題がイシューとなります。



イシューを設定してから問題解決に向かうわけですが、このイシューがあまり良くないと、私たちの労力が無駄になってしまう恐れがあるのです。



良くないイシューとはつまり、解決しても大きな意味を持たないイシューのことです。



逆に、私たちが解決するべき良いイシューの条件とは、次のようになります。

良いイシューの条件

  1. 本質的な選択肢である
  2. 深い仮説がある
  3. 答えを出せる


私たちはバリューのある仕事をしようと思ったら、これらの条件を満たすイシューを見極める必要があります。



この中で、特に気をつけないといけない条件は、3つ目の「答えを出せる」という条件です。



何をバカなことを言っているのかと思うかもしれませんが、世の中に答えを出せない問題というのは山程あります。



例えば、治療の効果は高いと思われていても倫理的に難しい治療だったり、効果判定手法が現状ではないような介入だったり、といった具合です。



神経難病で体が動かない人がいたとして、脳死判定をされた人の体に脳移植をするとか。



イシューを定めるときには、そのイシューが答えを出せるものであるかどうか、出せるのであればどのような手法で答えを出すのか、それを明確にしておく必要があります。


③ イシューの見極め方


ここまで、バリューのある仕事、イシューの定義や良いイシューの条件といった内容について書いてきました。



最後に、私たちが解くべきイシューを見極めるにはどうすればよいか、ここでは私が実施しやすいと思った2つの手法を紹介します。



1つ目は、「So what?」を繰り返すという手法。



問題をイシューとして設定する場合には、仮説の形にまで落とし込まなければいけません。



仮説をブラッシュアップするのに役立つのが、上記の「So what?」です。



日本語にすると、「だから何?」となります。



自分の中で問題を把握し、仮説を立てられたら、その仮説に対して「だから何?」と繰り返し問いを立てていきます。



例えば、歩行の安定性を上げるには、下肢の筋力トレーニングだけでは不十分ではないか?という問いを立てたとします。



それに対して「だから何?」と問います。



歩行の安定性を上げるには、下肢の筋力トレーニングだけでは不十分ではないか?

↓だから何?

下肢筋力のみ強くても歩行の安定にはつながらない。

↓だから何?

歩行時のバランスと関係が深いのは下肢筋力と体幹筋力である。

↓だから何?

歩行の安定性を語られる際に、下肢筋力に焦点を当てられることが多いが、実は体幹筋力の方が重要ではないか。

↓だから何?

訓練に体幹トレーニングを導入し、体幹筋力を向上させることで、下肢筋力トレーニング中心の介入よりも歩行の安定性が高まるのではないか?



これは一例で、この仮説が深いのかという議論は置いておいて、このように問いを深めることで、仮説が具体的になります。



そして、その深めた仮説をイシューとするのが、「So what?」を繰り返すという手法です。



2つ目は、極端な事例を考えるという手法。



要素や変数が入り組んでいる場合には、いくつかの重要な変数を極端な値に振ってみると、どの要素の動きがカギになるのかが見えてきます。



例えば、「歩行の安定性を上げるには、下肢の筋力トレーニングだけでは不十分ではないか?」という仮説があったとします。



この仮説では、歩行の安定性につながる変数を挙げてみます。



下肢筋力はもちろんのこと、体幹や上肢筋力。または下肢筋力を、大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋などに細分化してみてもいいかもしれません。



これらの変数が仮に極端な値であった場合を考えてみます。



対象者となる方の全身状態はそのままで、下肢筋力のみがもしもキックボクサー並みに強かったら歩行は安定しそうか?



もしくは、下肢筋力がフレイルと呼べるくらいに弱体化していたらどうなるか?



同様に体幹や上肢筋力についても、同じように極端に考えてみます。さらに細分化した部位も極端に強弱に振ってみます。大腿四頭筋、ハムストリングス、下腿三頭筋、など。



そうして考え、歩行の安定性につながる、特に重要なカギとなる変数が何なのか、イメージから当たりをつけるという手法です。



カギとなる変数に当たりがつけば、あとはそれをイシューとして組み込み、実際に検証していくことになります。



前述の例であれば、例えば体幹筋力を極端に振った時に、特に歩行が安定しそうだと思えば、歩行の安定性の鍵は体幹筋力であると仮説を立てることができ、それを検証できるようなイシューを立てます。



そして、体幹トレーニングを強化することで、実際に仮説が正しいか検証するといった流れになります。



このように、何が何につながっているのか?ということを変数として考え、極端に振り切った値になったらどうなるかを考えることで、イシューを深めることができます。



これらの手法を使って、ぜひ良いイシューを見極めてください。

【イシューを立てた後】ストーリーラインをつくる

本当に意味のある問題=イシューを見極めることができたら、解の質を高めるために「ストーリーライン」をつくります。



ストーリーラインでは、イシューの構造を明らかにして、分析のイメージづくりを行います。



これによって、イシューから最終的に何を生み出すのか、何を伝えることがカギとなるのか、そのためにはどの分析がカギになるのか、といった活動の全体像が明確になります。



ここではストーリーラインの1つの型を紹介します。



それは、「空・雨・傘」の型です。

空・雨・傘の型

  • 空:〇〇が問題だ(課題の確認)
  • 雨:この問題を解くには、ここを見極めなければならない(課題の深堀り)
  • 傘:そうだとすると、こうしよう(結論)


どういうことかというと、

空・・・西の空が良く晴れているな。
雨・・・今の様子では、当面雨は降ることはなさそうだ。
傘・・・だとすると、今日傘を持っていく必要はない。

という、3段階からなる論理構造で、ストーリーラインを汲みます。



例えば、「歩行の安定性を上げるには、下肢の筋力トレーニングだけでは不十分ではないか?」という課題があったとします。



この課題についての、空・雨・傘はこんな感じです。

空・・・歩行の安定性を上げるには、下肢の筋力トレーニングだけでは不十分。
雨・・・下肢の筋力よりも体幹の筋力の方が、歩行安定性と関連があるのではないか。←イシュー
傘・・・体幹の筋力トレーニングを強化し、体幹の筋力と歩行の安定性の関係を調べる。

というようなストーリーラインになります。



そして、傘の部分はもう少し深堀りして、どのような体幹トレーニングを実施するのか?筋力や歩行の安定性の評価方法はどうするのか?体幹の筋力と歩行の安定性の関係をみるために、どのような手法を使うのか?といったことも考えておきます。



それらを紙なりデータなりに表出をしておくことで、それがストーリーラインになります。



あとはストーリーラインを見直し、不備がないか確認をして、実際に取り組んでいく過程に入ります。



そして、忘れてはいけないのが、このストーリーラインは徐々に修正をしていかなければならないということです。



課題解決を進めていくうちに、トレーニング内容が適切でなかったり、データの集積方法や分析方法が適切でなかったりといった事態は多々起こります。



そもそも、イシュー自体、動く的のように変化をするものです。



そういう事態にも慌てずに、どのように解決していけばいいか考え、ストーリーラインを微調整していってください。



そうやって、ブラッシュアップしていくことで、よりよいストーリーラインになっていきます。

まとめ

ここまでで、「イシューからはじめよ」の大まかな概要を説明してきました。



結局大事なことは、何でもとりあえずやってしまえばいいという非効率的な仕事はせず、バリューのある仕事をするためにまずはイシューを見極めようという話でした。



そして、そのイシューを見極める方法として、「So what?」を繰り返すという手法や極端な事例を考えるという手法がありました。



イシューが見極められたら、空・雨・傘の型を使ってストーリーラインをつくってから、仕事を開始していこうという話をしました。



そして、イシューとは動く的であり、ストーリーラインに沿って仕事をしながら、微調整をしていこうという話をしました。



イシューからはじめることで、自分がしなければならない仕事は激減し、かわりに自分が取り組むべき仕事に注力できるようになります。



けっこう難しいのですが、ぜひ現場でイシューからはじめることを実践してみてください。



ここまで読んでいただきありがとうございました(^^♪

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